November 11, 2009
「もうすぐ世界は終焉を迎える」。古代マヤ文明の“予言”に便乗した2012年終末説ビジネスが大盛況だ。
サバイバルキットやドキュメンタリー映像はもちろんのこと、2012年の“真実”を語るという本も200冊近く出版されている。インターネットでも2012年終末説に関連するWebサイトや商品がいくらでも見つかる。アルマゲドンの到来はいまのところ「2012年12月21日」の予定ということなので、それまではこの状況が続くのだろう。
今月公開される大災害パニツク映画『2012』(日本での公開は11月21日)も、バイラルマーケティングといわれるネット上の口コミを活用した宣伝活動を積極的に展開している。このような誇大宣伝にあおられて、“世界の終末”を真剣にとらえるあまり不安に悩む人が現れ始めており、専門家は懸念を表明している。
例えば、NASAのWebサイト「Ask an Astrobiologist(宇宙生物学者に質問しよう)」では、2012年終末説に関する質問が何千通も届いているという。「憂慮すべき相談も含まれている。本当に恐怖を感じている人がたくさんいるのだ」と、NASA宇宙生物学研究所(NAI)の上級研究員デイビッド・モリソン氏は話す。
「“世界が終わる瞬間を経験したくないので自殺を考えている”という十代の若者のケースが2例あった。ここ2週間で2人の女性が、“混乱と苦痛を耐え抜く自信がないから、子どもを殺して自分も死のうと思う”と訴えてきている」。
モリソン氏によると、恐怖心をあおっているのは今回の件でひともうけをもくろむ人たちであり、映画『2012』を配給するソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントのWebサイトの作りにも問題があったという。映画紹介サイト内のリンクをクリックすると、科学団体のコメントや各種機関のプレスリリースなどが掲載されたサイトが現れ、一見すると来るべき災厄の“真実”を語るものとして掲載されていた。
「今でこそ映画『2012』のWebサイトの一部であることを示すただし書きが付いているが、当初はそのような表記がなく、2012年終末説に多少なりとも真実の部分があるような印象が伝わってしまった」とモリソン氏は話す。
ソニー・ピクチャーズの広報担当スティーブ・エルザー氏は次のように反論している。「Webサイトが広告用の素材であり、映画のプロモーションの一環であることは明らかだ。予告編やリンク先のWebサイトを見る映画ファンは、『2012』が娯楽作品であることを理解している。『トランスフォーマー』の宣伝サイトを見ても、実際にはロボットエイリアンなど地球に来ていないということはわかるし、『ニュームーン/トワイライト・サーガ』にしたってバンパイアが私たちの中に紛れ込んでいるとは思わない」。
アメリカにあるウィスコンシン大学の歴史学者ポール・ボイヤー氏は、「一般的に言って、2012年終末説に対する恐怖心は何世紀にもわたって繰り返されてきたものと変わらない」と話す。
例えば19世紀前半、バプテスト教会の宣教師ウィリアム・ミラーは1843年にイエス・キリストが再臨すると予言し、10万人ものアメリカ人がそれを信じた。しかし、そのようなことは起こらず、ミラー説の信奉者は大いに落胆した。
1970年代にはハル・リンゼイが『今は亡き大いなる地球(The Late, Great Planet Earth)』を著し、アメリカでベストセラーとなった。この本には1980年代に世界の終わりが来ると予言されていたが、私たちもリンゼイ氏もいまだに生きている。同氏はそれ以来、自説の改訂を続けているようだ。
「Xデーを10年後あたりに設定するのがこういった予言のパターンだ。すぐにもその日が来そうな切迫した印象を与える」とボイヤー氏は話す。
そして、“陰謀説”がこういった予言の勢いに油を注ぐ。政府は災厄を事前に知っているが国民には何も知らせないといった話が多い。現在ではインターネットのおかげで陰謀説は急速に勢いを増し、かつてないほどの広がりを見せることがある。
ボイヤー氏は次のように話す。「ほとんどの人はこの手の話をある種の“知的ゲーム”として楽しんでいるが、中には深刻にとらえる人もいる。予言に夢中になる人の示す特徴として、歴史認識がまったく欠如している点が共通しているようだ」。歴史を少しでも眺めてみれば、“世界の終わり”を伝える予言がいつの時代にも登場し、常に間違っていたことはすぐにわかる。「にもかかわらず、いつの時代にも終末説がカネを生む市場が存在している」。
アメリカのニューヨーク州ハミルトンにあるコルゲート大学の天文考古学者で古代マヤ文明を専門とするアンソニー・アベニ氏も、このヒステリー状況を実感しているという。「電子メールで話した高校生は、世界が終わりに向かっていると真剣に考えており、誰もが死ぬことになると信じていた。この件がきっかけとなり、正確な情報を伝える本を書こうと思い立った」。
アベニ氏の『The End of Time: The Maya Mystery of 2012(歴史の終焉:2012年マヤ予言の謎)』をはじめとして、専門家たちはそれぞれの著作の中で、古代マヤ予言に大災害が示されていたという神話のウソを暴き、古代文化の事実に焦点を当てるよう試みている。「ある意味で、いまは良い機会だとも考えられる。人々が2012年終末説に脅えたままでは、古代マヤの驚くべき文化を学ぶ大きなチャンスを逃してしまう。古代マヤに注目が集まっているいまこそ、正確な事実を伝えるのが専門家の務めだ」。
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